PD-L1陽性の未治療進行/転移性 トリプルネガティブ乳がん患者を 対象に、サシツズマブゴビテカン+ ペムブロリズマブ併用療法の 有効性と安全性を評価した第III相 ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験
2025年06月30日
音声で聞く
0分00秒
0:00
0:00
要約

PD-L1陽性進行/転移性トリプルネガティブ乳がん(mTNBC)の1次治療での改善が望まれており、アンメットニーズである。mTNBCのうちPD-L1陽性例は40%程度含まれているが、化学療法+免疫チェックポイント阻害剤のPFSは7.5-9.7ヶ月に留まっており、約半数の患者は2次治療が実施されていない。サシツズマブゴビテカン(SG)はTROP2を標的とした抗体薬物複合体(ADC)であり、mTNBCの2次治療以降で承認された、全生存期間(OS)を延長を示す薬剤である。

SG+ペムブロリズマブは化学療法+ペムブロリズマブよりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

本試験ではSG(10mg/kg Day1,8/21日)+ペムブロリズマブ(200mg /21日) 221例を医師選択の化学療法(ゲムシタビン+カルボプラチン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル)+ペムブロリズマブ 222例と比較する、国際共同非盲検ランダム化第III相試験である。標準治療群は病勢進行時はSGへのクロスオーバーが許容されていた。

患者背景として、年齢中央値はSG+ペムブロリズマブ群で54歳、化学療法+ペムブロリズマブ群で55歳、両群ともにde novostage IVが34%、術後6~12ヵ月以内の再発が18%、12ヵ月以上での再発が48%であり、両群ともバランスの取れた患者集団であった。なおPD-1/L1阻害剤の使用例がそれぞれ4%と5%であった。

盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS中央値は、SG+ペムブロリズマブ群11.2ヵ(95%信頼区間[CI]:9.3-16.7ヶ月)、化学療法+ペムブロリズマブ群7.8ヵ月(95%CI:7.3-9.3ヶ月)であり、SG+ペムブロリズマブ群において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.65[95%CI:0.51~0.84]、P<0.001)。12ヵ月PFS率は、それぞれ48%と33%であった。治験担当医によるPFS中央値は、SG+ペムブロリズマブ群11.3ヵ月(95%CI:9.2-14.6ヶ月)、化学療法+ペムブロリズマブ群8.3ヵ月(95%CI:7.3~9.3ヶ月)であった(HR:0.67[95%CI:0.52-0.87]、P=0.002)。12ヵ月PFS率は、48%および36%であった。

PFSのサブグループ解析では一貫してSG+ペムブロリズマブ群の有効性を示す結果であったが、前治療としてPD-1/L1阻害剤の使用歴がある場合は差を示すことができなかった。ただし、両群合わせて20例ほどのグループであり、結果の解釈には注意が必要である。

全生存期間(OS)はイベント到達26%と未成熟であったが、SG+ペムブロリズマブ群に良好な傾向がみられた。

客観的奏功率(ORR)は、SG+ペムブロリズマブ群60%(95%CI: 52.9-66.3)、化学療法+ペムブロリズマブ群53%(95%CI : 46.4 P 59.9)であった(OR: 1.3[95%CI:0.9-1.9])。完全奏効はそれぞれ13%と8%であった。奏功期間(DOR)の中央値は、SG+ペムブロリズマブ群16.5ヵ月(95%CI: 12.7-19.5ヶ月)、化学療法+ペムブロリズマブ群9.2ヵ月(95%CI: 7.6-11.3ヶ月)であった。

安全性については、SG+ペムブロリズマブ群では、治療関連有害事象(TEAE)による治療中止が26例(12%)であったが、化学療法+ペムブロリズマブ群の68例(31%)よりも少なかった。Grade3以上のTEAEは、SG+ペムブロリズマブ群71%、化学療法+ペムブロリズマブ群70%に発現した。SG+ペムブロリズマブ群では、好中球減少63%(G3以上43%)、疲労感58%(8%)、悪心68%(3%)、下痢70%(10%)、貧血37%(7%)、脱毛52%、便秘41%(1%)などが報告されており、これまでのSGとペムブロリズマブの臨床試験と同等の結果であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。

ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験では、PD-L1陽性進行/転移性mTNBCに対する一次治療でのSG+ペムブロリズマブ群の化学療法+ペムブロリズマブ群に対するPFSの優越性(PFS中央値 11.2ヶ月 vs 7.8ヶ月; HR,0.65; 95%CI 0.51-0.84; P<0.001)を示した。

解説

サシツズマブゴビテカン(SG)は、TROP2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であり、二次治療以降のトリプルネガティブ転移乳癌(mTNBC)において、従来の化学療法と比較して有意な予後改善効果を示し、本邦でも化学療法歴のあるmTNBCに対して使用されている。 

mTNBCは予後不良なサブタイプであり、実臨床における全生存期間(OS)の中央値は約13カ月にとどまる。全体の49%は二次治療に進むことができず、34%は一次治療中に死亡するという厳しい現実がある。このような背景から、mTNBCに対する有効な一次治療の開発は、極めて重要かつ喫緊の課題である。 

ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験では、PD-L1陽性mTNBCに対する一次治療として、ペムブロリズマブ(PEM)とサシツズマブゴビテカン(SG)の併用が、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間(PFS)の延長を示した。全生存期間(OS)については現時点で有意差は認められていないが、これはイベント数が限られていることに加え、標準治療群の81%において病勢進行後に二次治療としてSGが投与されていることが影響している可能性がある。

PEM+SGに関連する有害事象(下痢、悪心、好中球減少症など)は高頻度ではあるが管理可能であり、治療中止や減量の頻度も標準治療群と比較して少なく、またPEMとSGとの併用によって有害事象が相乗的に増悪する傾向も認められていない。

一方で、本試験におけるPEM既治療例は全体の4.5%にとどまっており、周術期にPEMを含む治療を受けた症例において、PEM+SG併用がPEM未治療例と同様の効果を示すかどうかは不明である。また、本試験ではPEMの再投与によるSG併用効果を直接的に検証する設計にはなっていない点にも留意が必要である。

本試験の結果から、PEM+SG併用療法はPD-L1陽性mTNBCに対する一次治療として、新たな標準レジメンとなる可能性がある。

さらに、詳細な結果は未公表ながら、免疫チェックポイント阻害薬の適応とならないmTNBCを対象とした第III相試験(ASCENT-03)においても、SGは化学療法と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるPFS延長を示したことがプレスリリースで報告されており、PD-L1発現の有無にかかわらずSGを含む治療レジメンがmTNBCの一次治療における新たな標準治療となる可能性が示唆されている。

今後は、mTNBCに限らず、すべての乳癌サブタイプにおいて、一次治療における標準レジメンが従来の化学療法からADCを含む治療へと置き換わっていくことが予想される。

要約
音声で聞く
0分00秒
0:00
0:00
解説
解説:
2025年ASCO乳がん臨床試験の要約