HER2陽性進行・転移性乳がんに 対する一次治療としての トラスツズマブデルクステカン+ ペルツズマブとタキサン+ トラスツズマブ+ペルツズマブの 第3相比較試験: DESTINY-Breast09中間解析
2025年06月30日
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要約

本講演はDESTINY Breast09(DB09)の中間解析で、3アームのトラスズマブデルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブ(P)、T-DXd+プラセボ、タキサン(T)+トラスズマブ(H)+P(THP)のうち中間解析の条件を満たしたT-DXd+PとTHPとの比較データが発表された。

現在のHER2陽性進行・転移性乳がんに対する一次治療はTHP療法が標準治療となっている。DB03試験では2次治療としてT-DXd単剤が28.8ヶ月の無増悪生存期間(PFS)を示しており、今回の1次治療でのT-DXd+Pの優越性を示す試験として、各アーム380例以上の症例でランダム化されている。

盲検下独立中央判定(BICR)でのPFS中央値はT-DXd+P 群で40.7ヶ月(95%信頼区間[CI]:36.5ヶ月-NC)、THP群で26.9ヶ月(95%CI:21.8ヶ月-NC)であり、ハザード比[HR]:0.56[95%CI:0.44-0.71]、P<0.00001の統計学的にも臨床上意義のある改善を示した。24ヵ月PFS率は70.1%および52.1%であった。

治験責任医師によるPFS中央値も同様にT-DXd+P 群で40.7ヶ月(95%CI:36.5ヶ月-NC)、THP群で20.7ヶ月(95%CI:17.3-23.5ヶ月)、HR:0.49 [95%CI:0.39-0.61]、P<0.00001であった。24ヵ月PFS率は68.6%および43.7%であった。

PFSのサブグループ解析でも一貫してT-DXd+P 群が良好な結果であり、de novo stage IVと再発例、ホルモン受容体の陽性/陰性、PIK3CA変異の有無に関わらず有効性を示した。

全奏功率(ORR)は、T-DXd+P群85.1%(95%CI:81.2~88.5)、THP群78.6%(95%CI:74.1~82.5)であった。完全奏効率は、それぞれ15.1%および8.5%となり、T-DXd+P群ではおおよそ2倍の頻度であった。

全生存期間は、まだまだ十分なイベントが確認できていないものの、T-DXd+P群にやや上となる生存曲線を示している。PFS2については、2次治療を受けた患者が半数以下であり、こちらも受分なイベントが確認できていないが、T-DXd+P群の有効性を示す結果であった(HR:0.60[95%CI:0.45-0.79])。

安全性については新規の有害事象に乏しく、これまでのT-DXd単剤の試験と同様であった。T-DXd+P群では薬剤性肺臓炎(ILD)は46例(12.1%)に出現し、2例(0.5%)の死亡例を認めたが、残りはGrade1-2のコントロール可能なものであった。

T-DXd+P群はTHP群と比較し、病性増悪もしくは死亡のリスクを44%低下させ、統計的にも臨床的にも意義のあるPFSの有効性を示した。

解説

HER2陽性進行・再発乳癌に対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、現在、2次治療における標準治療薬として国内外で広く使用されている。一方、現時点の一次治療の標準レジメンは、タキサン(T)+トラスツズマブ(H)+ペルツズマブ(P)(THP)である。

現在進行中のDESTINY-Breast09(DB09)試験では、HER2陽性進行・再発乳癌に対する一次治療としてのT-DXdの臨床応用が検討されており、今回の中間報告では、THPとT-DXd+Pの比較解析結果が報告された。これによりT-DXd+Pは新たな一次治療となり得ること示されたが、いくつかの検討すべき点が残されている。

一つ目は、T-DXdの投与期間とその管理である。T-DXd群の治療期間中央値は20カ月と長期にわたり、THP群のタキサン投与期間(ドセタキセル:5.5カ月、パクリタキセル:4.4カ月)と比較しても細胞傷害性薬剤への曝露期間が長い。奏効後のある一定期間後に、HPによる維持療法への切り替えを検討することは、蓄積毒性の回避とQOLの観点からも現実的である。

二つ目は、逐次治療の視点である。T-DXd+P群ではPFS2も有意に延長していたが、THP群のうちT-DXdに移行した症例は10%(二次治療移行例の22%)にとどまっていた。なお、二次治療を対象としたDESTINY-Breast03(DB03)試験では、T-DXd単剤のPFS中央値は29カ月であった。したがって、THPに抵抗性を示す症例においてはT-DXd+Pによる一次治療が望ましいが、THPに良好に反応する症例では、従来通りTHPからT-DXdへのシークエンスを考慮する選択肢も依然として有効と考えられる。 

抗HER2療法においては、治療効果予測因子がレジメンごとに大きく異なることは少ないが、将来的にTHP不応性かつT-DXd反応性の症例群を抽出できれば、個別化治療戦略の構築につながる可能性がある。 

最後に、本試験におけるT-DXd単剤群の結果が現時点で未公表である点も留意すべきである。仮に最終解析でT-DXd単剤とT-DXd+Pの間に予後の差が認められなかった場合、T-DXd+Pで治療を開始された患者に対し、下痢などの副作用だけでなく、経済的・時間的な負担を負わせる結果となる懸念がある。

これらの点を踏まえつつも、T-DXdが近い将来、HER2陽性進行・再発乳癌に対する一次治療の選択肢として臨床に導入されることは確実と見られる。

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解説
解説:
2025年ASCO乳がん臨床試験の要約