ER+/HER2-進行乳がんにおける 一次内分泌療法中にctDNA-での ESR1-変異検出時にCamizestrant+ CDK4/6-阻害剤に変更する 第3相二重盲検試験(SERENA-6)
2025年06月30日
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要約

70%の乳がんはER+/HER2-タイプであり、ERを構成するESR1遺伝子に変異が生じると、エストロゲンの有無に関わらずにERの活性化につながる。ER+/HER2-進行乳がんの診断時にはESR1変異は5%未満と少ないものの、一次治療であるアロマターゼ阻害剤(AI)+CDK4/6阻害剤の病勢増悪時には40%程度にまで上昇する。Camizestrantは、変異ER並びに野生型ERを抑制・分解することを目的に合成された次世代の経口SERDである。

ESR1変異は、リキッドバイオプシーのctDNAアッセイにより、画像による病勢増悪の前に検出可能である。PADA-1試験では、AI+CDK4/6阻害剤(パルボシクリブ)投与中にESR1を検出し、AIをフルベストラントにスイッチすることで、AIを継続するよりもPFSが延長することが示された。また、SERENA-2試験では、ESR1変異を有するER+/HER2-進行乳がんにおいて、Camizestrantがフルベストラントと比べてPFSの延長を示している。

これらの知見を背景に、AI+CDK4/6阻害薬の併用療法中にESR1変異が検出された患者を対象とし、Camizestrant+CDK4/6阻害薬へスイッチする群と、AI+CDK4/6阻害薬を継続する群を比較する第III相SERENA-6試験が実施された。

SERENA-6試験では、定期的な画像検査とctDNA検査により、内分泌療法抵抗性の指標であるESR1変異を有する患者を特定した。ESR1変異が検出され、病勢進行が認められない患者に対しては、AIからCamizestrantに切り替え、同じCDK4/6阻害薬との併用を継続した。Camizestrantは、ESR1変異の有無にかかわらず抗腫瘍活性を示す、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)である。

一次治療としてAI+CDK4/6阻害薬を6ヵ月以上実施した3325例をスクリーニングし、2〜3ヵ月ごとのctDNA検査(Guardant360 CDx)でESR1変異が検出されたのは548例であった。初回検査での同定率は51%、2〜5回目の検査での同定は38%であった。病勢進行の診断を受けた53例を含む233例が除外され、最終的に病勢進行のない315例がランダム化された。

Camizestrant(75mg/日)+CDK4/6阻害薬にスイッチされた群(155例)と、AI+CDK4/6阻害薬を継続する群(155例)で、無増悪生存期間(PFS)を主要評価項目として比較した。

PFS中央値は、Camizestrant切替群で16.0ヵ月(95%CI:12.7〜18.2)、AI継続群で9.2ヵ月(95%CI:7.2〜9.5)であり、Camizestrant群が有意に良好であった(HR:0.44[95%CI:0.31〜0.60]、P<0.00001)。24ヵ月PFS率は、Camizestrant群29.7%、AI継続群5.4%であった。

PFSのサブグループ解析でも、Camizestrant切替群における一貫した有効性が示された。患者報告アウトカム(健康状態・生活の質)が悪化するまでの期間中央値は、Camizestrant群23.0ヵ月(95%CI:13.8〜NC)、AI継続群6.4ヵ月(95%CI:2.8〜14.0)であり、QOLの面でもCamizestrant群が良好であった(HR:0.53[95%CI:0.33〜0.82]、P<0.001)。

PFS2およびOSは未成熟であるが、PFS2においてCamizestrant群で良好な傾向が認められた(HR:0.52[95%CI:0.33〜0.81]、P=0.0038)。

Grade3以上の有害事象の発現率は、Camizestrant群で60%、AI継続群で46%であった。SAEの頻度はそれぞれ10%と12%、治療中止の頻度は3%と4%であり、両群で同等であった。Camizestrant群で認められた主な有害事象は、好中球減少症55%(Grade3以上:45%)、貧血17%(うちGrade3以上:5%)、白血球減少症17%(10%)、光視症20%(1%)などであり、新たな安全性シグナルは認められなかった。

ER+/HER2-進行乳がんにおける一次内分泌療法中のctDNAモニタリングによって、ESR1変異を内分泌療法抵抗性の早期シグナルとして捉え、Camizestrantへスイッチする戦略は、PFSの延長に寄与する可能性が示された。

解説

ESR1変異はエストロゲン受容体α(ERα)の構造変化により、リガンド非依存的な転写活性化を引き起こすことで、内分泌療法に対する獲得耐性を生じさせる。進行再発乳癌では、アロマターゼ阻害薬(AI)治療後に約40%の症例でこの変異が認められる。

経口選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)は、新規内分泌療法薬として開発が進められており、とくにESR1変異陽性乳癌に対する治療効果が複数の薬剤で報告されている。カミゼストラントもその一つであり、SERENA-6試験の中間解析では、循環腫瘍DNA(ctDNA)中にESR1変異が検出された段階で、AI+CDK4/6阻害薬からカミゼストラント+CDK4/6阻害薬へ治療を早期に切り替えることにより、病勢進行までの期間(PFS)が延長し、QOLも維持されることが示された。

このように、獲得耐性に関わる分子マーカーを用いた治療戦略は、耐性出現の早期段階での介入により、病勢進行の遅延とQOLの維持を可能にする点で画期的である。

一方で、本試験の解釈および臨床応用にはいくつかの課題がある。第一に、本試験ではクロスオーバーが認められておらず、AI+CDK4/6阻害薬継続群での病勢進行後にカミゼストラントを用いた場合のPFS2と、介入群のPFSとの直接比較ができない。そのため、早期治療変更による明確なPFS延長効果は示されていない(なお、フルベストラントを用いたPADA-1試験では同様の治療戦略でPFSの延長が報告されている)。

さらに、治療後の選択肢の変化も無視できない。近年、化学療法後に使用される抗体薬物複合体(ADC)の登場により、OSへの影響が複雑化しており、本戦略による最終的なOSベネフィットを評価するには慎重な検討が必要である。

加えて、2~3か月ごとのリキッドバイオプシーによるESR1変異のモニタリングには、検査頻度と費用の両面で課題がある。今回使用された市販のctDNAパネル検査をコンパニオン診断と位置づけた場合、本邦の保険診療ではがん遺伝子パネル検査は「標準治療終了後または終了見込み」の患者に対して1回(56,000点)のみ算定可能であり、この治療戦略を実臨床に導入するには制度面での整備が不可欠である。

なお、カミゼストラントは米国FDAよりBreakthrough Therapy指定を受けており、米国では開発の加速が図られているが、本邦での導入には、保険制度と臨床体制の両面において依然として高いハードルが残されている。



本コメントは、医療従事者向けの情報提供を目的としており、特定の医薬品または検査の使用を推奨するものではありません。治療方針の決定にあたっては、各医療機関の判断および最新のガイドラインをご参照ください。

※本内容は、ASCO 2025にて公開された情報および演者の発表内容に基づいて構成されています。

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解説
解説:
2025年ASCO乳がん臨床試験の要約